お酒で赤くなる人・ならない人 — 「赤くなりやすさ」と酔いのちがい
少し飲んだだけで顔が赤くなる人もいれば、いくら飲んでも変わらない人もいます。この差は、気合いや飲み慣れではなく、生まれ持った体質です。日本を含む東アジアではこの「赤くなりやすい」タイプがとても多く、成人のおよそ4割にあたるとされています。[2][3] なぜ赤くなるのか、そしてそれが「酔い」とどう関わるのかを、厚生労働省の情報をもとに整理します。
赤くなるのは、アセトアルデヒドのしわざ
飲んだアルコール(エタノール)は、おもに肝臓で2段階に分解されます。
- エタノール → アセトアルデヒド(酵素 ADH などのはたらき)
- アセトアルデヒド → 酢酸(酵素 ALDH2 のはたらき)。酢酸はさらに水と二酸化炭素へ。
途中にできるアセトアルデヒドには毒性があり、顔の赤み・動悸・頭痛・吐き気の原因になります。2段階目の ALDH2 がしっかりはたらけば、アセトアルデヒドはすばやく無害な酢酸へ進みます。ところがこの ALDH2 のはたらきが弱いと、アセトアルデヒドが体に溜まりやすく、赤くなる——これが「赤くなりやすさ」の正体です。医学的にはフラッシング反応と呼ばれます。[1]
体質は、おおまかに3タイプ
ALDH2 のはたらきには、生まれ持った3つのタイプがあります。
| タイプ | ALDH2 のはたらき | 傾向 |
|---|---|---|
| 活性型 | しっかりはたらく | ほとんど赤くならない |
| 低活性型 | 大きく落ちる | 少しの量で赤くなりやすい |
| 非活性型 | ほとんどはたらかない | ごく少量でも強く反応しやすい |
日本人ではおおよそ、活性型が半分ほど、低活性型が4割ほど、非活性型が5%ほどとされています。[2][3] なお、低活性型は「はたらきが半分」と誤解されがちですが、ALDH2 は4つの分子が組んではたらくため、片方が弱いだけで全体では本来の16分の1ほどまで落ちます。だから「少しなら飲めるけれど、すぐ赤くなる」という出方になります。[2]
生まれつきで、鍛えても変わらない
このタイプは生まれつき決まっていて、飲み続けても変わりません。「鍛えれば飲めるようになる」と言われることがありますが、変わっているのは慣れ(耐性)であって、ALDH2 そのもののはたらきや、アセトアルデヒドの溜まりやすさが変わるわけではありません。赤くなりにくくなったように見えても、体の中で起きていることは同じです。[2]
同じ量でも、酔い方はちがう
ここが大事なところです。同じ量を飲んで、同じくらいの血中アルコール濃度になっても、感じる酔いの強さは体質でかなり変わります。赤くなりやすい人は、アセトアルデヒドの影響を早く・強く受けやすいぶん、同じ濃度でも酔いを強めに感じやすいことが報告されています。[4] つまり「まわりと同じペースなら、同じ酔い」とは限りません。
大事な補足を一つ。赤くなりやすさは、アルコールそのものが「抜ける速さ」を変えるわけではありません。はたらいているのはアセトアルデヒドの側で、血中アルコール濃度のカーブや抜けるまでの時間そのものは、赤くなりやすさでは大きく変わらないと考えられています。ちがうのは「同じ濃度を、どう感じるか」です。抜ける時間そのものについてはお酒が抜ける時間の記事でくわしく扱っています。
赤くなりやすさと二日酔い
赤くなりやすい体質は、二日酔いのしやすさにも関わります。低活性型の人は、より少ない量でも二日酔いになりやすいことが研究で示されており、[5] 厚生労働省も「フラッシング反応を示す非活性型 ALDH2 を持つ人は二日酔いになりやすい」としています。[1] 二日酔いの重さが何で決まり、どう見積もれるのかは二日酔い予報の記事にまとめています。
Nomichoでの反映
Nomicho(飲み帳)は、プロフィールで「赤くなりやすさ」(赤くなりにくい/少し赤くなる/すぐ赤くなる)を選べます。赤くなりやすい体質を選ぶと、酔いの段階に早めに届くように見積もり、二日酔い予報にも反映します。ここで変えているのは濃度の数字そのものではなく、その濃度をどう感じるか(酔いの段階の目安)です。みんな同じ計算ではなく、自分の体質に寄せた目安を出すためです。ただし、これはあくまで推定で、計測器ではありません(運転してよいかどうかの判断に使えるものではありません)。飲んでいる最中の「いまの酔い」をどう見積もっているかは、リアルタイム予測の記事をどうぞ。
参考
- [1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「フラッシング反応」(赤くなりやすい体質と二日酔いについて)
- [2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」(3タイプと酵素のはたらき)
- [3] Chen et al. ALDH2 and the population biology of the flush response. 2022. PMC9235878(東アジアでの ALDH2 変異の頻度)
- [4] Wall, Thomasson, Schuckit & Ehlers. Subjective feelings of alcohol intoxication in Asians with genetic variations of ALDH2. Alcohol Clin Exp Res. 1992. PMID 1443441(同じ濃度でも酔いを強く感じやすい)
- [5] Yokoyama et al. Alcohol flushing, ALDH2 genotype and hangover. 2005. PMID 16046871(低活性型はより少ない量で二日酔いになりやすい)
飲み帳が実際にどんな式と一次資料でこれを計算しているかは、予測の方法論で公開しています。
本記事は一般的な情報であり、医学的な助言ではありません。図は説明のための概念図で、割合は目安です。