二日酔いは予測できる? 飲んだあとを「予報」するアプリの仕組み
飲んでいる最中に、このあとの二日酔いの重さがだいたい分かったら——そう思ったことはないでしょうか。正直に先に言うと、二日酔いがなぜ起きるのかは、まだ完全には解明されていません。ぴたりと当てる魔法はありません。それでも、二日酔いの重さに関わる要因は研究でわかってきていて、そこから「だいたいどのくらいになりそうか」を見積もることはできます。その仕組みと、限界を整理します。
そもそも、二日酔いはなぜ起きるのか
飲んだアルコール(エタノール)は、おもに肝臓で2段階に分解されます。まず酵素のはたらきでアセトアルデヒドという物質になり、次にそれが酢酸へと分解されて、最後は水と二酸化炭素になります。途中にできるアセトアルデヒドには毒性があり、顔が赤くなる・動悸・気持ち悪さの原因になります。
ただ、二日酔いの正体は「アセトアルデヒドが残っているから」だけでは説明しきれません。二日酔いの状態の血液からアセトアルデヒドが検出されることはむしろまれで、軽い離脱症状・脱水・睡眠の質の低下・お酒に含まれる微量成分(コンジナー)など、複数の要因が重なって起きるという見方が有力です。[1][4] つまり「これ一つ」という原因がなく、だからこそ一つの数字で言い当てるのが難しいのです。
二日酔いの重さは、何で決まるのか
完全な解明には至っていなくても、「重くなりやすい条件」は研究で繰り返し示されています。[1]
| 関わる要因 | 重さへの向き |
|---|---|
| 飲んだ純アルコール量(体重あたり) | 多いほど重くなりやすい。体が小さいほど、同じ量でも効きやすい |
| 血中アルコール濃度のピーク | 濃度が高くまで上がるほど、つらさが出やすい |
| 睡眠 | 眠りが短い・浅いと、重くなりやすい |
| 体質(赤くなりやすさ) | アセトアルデヒドを分解する力が弱いと、つらさが出やすい |
| お酒の種類 | 色の濃いお酒に多い微量成分(コンジナー)が関連するとされる |
| その時の酔いの強さ | 主観的に強く酔ったときほど、二日酔いも重い傾向 |
飲んだ量(純アルコール量)と主観的な酔いの強さは、複数の研究でくり返し二日酔いの重さと結びつくことが報告されています。[1][2] 睡眠の短さ・質の低下も、お酒の量とは別に重さに効くことが知られています。[3] また、お酒で赤くなりやすい(アセトアルデヒドを分解する力が弱い)体質の人ほど、つらさが出やすいことも知られています。[5] ただし、どれも「平均すればこういう傾向」という話で、同じ条件でも感じ方には大きな個人差があります。
だから「一つの数字」ではなく、1〜5で
要因が多く、個人差も大きいので、二日酔いの見積もりは、細かい数字で言い切るよりざっくりした段階で見るのが正直です。Nomicho(飲み帳)は、重さを1〜5の5段階で見積もります。
Nomichoの二日酔い予報
Nomicho(飲み帳)は、飲んだものを記録するiPhoneアプリ。その「二日酔い予報」は、二日酔いを早めに予測するための機能です。その日の飲みが終わると、上のような要因——飲んだ純アルコール量、血中アルコール濃度のピーク、睡眠、赤くなりやすさ、お酒の種類、その時の酔いの強さ——をまとめて、二日酔いの重さを1〜5で見積もります。お酒を飲んでいない(純アルコール量がゼロの)ときは、予報は出しません。出せる根拠がないものを、それらしく出さないためです。
使うほど、あなたに近づく
ここが、ただの早見表との大きな違いです。予報を出したあと、Nomichoはお酒が抜けたころに、そっとこう聞きます——「二日酔い、どんな感じだった?」。あなたが実際の重さを1〜5で答えると、その「予報」と「実際」のズレを学習して、次の予報をあなた寄りに調整していきます。
最初は、多くの人を平均した出発点から始まります。実際の答えが数回分(おおよそ5回ほど)たまると、あなた専用の効き方が見えはじめ、予報が少しずつ自分に近づいていきます。下の図は、その「近づき方」を概念的に描いたものです。
予報する→実際を聞く→記録する→次に活かす。この小さなループが、二日酔い予報を「自分のための見積もり」にしていきます。
「水を飲めば防げる」って本当?
水を多めに飲む、ウコンを摂る、コーヒーを飲む——よく言われる対策ですが、二日酔いを確実に防いだり治したりする方法は、いまのところ知られていません。脱水は重さに関わる要因の一つなので水分補給に意味がないわけではありませんが、それだけで二日酔いがなくなるわけではない、というのが正直なところです。お酒に含まれる微量成分(コンジナー)は色の濃いお酒に多いとされ、種類による差は報告されていますが、結局いちばん効くのは「飲んだ総量」と「体質」です。[1]
予報でわかること、わからないこと
予報はあくまで推測で、計測器ではありません。水分や食事、その日の体調など、ここに入りきらない要因でも二日酔いは変わります。医療的な診断でもありません。できるのは、「自分はこのくらい飲むと、このあとこのくらいになりやすい」という、自分のパターンを知る手がかりを渡すこと。良し悪しを採点するためのものではなく、自分の体でお酒がどう響くのかを、好奇心から眺めるための一つの目安です。
なお、「血中アルコール濃度が抜けること」と「二日酔いがないこと」は別の話です。濃度がほぼゼロまで下がっても、つらさが残ることはあります。その理由はお酒が抜ける時間の記事でくわしく触れています。飲んでいる最中の「いまの酔い」をどう見積もっているかは、リアルタイム予測の記事をどうぞ。赤くなりやすい体質が酔いや二日酔いにどう関わるかは、赤くなりやすさと酔いの記事にまとめています。
参考
- [1] Mackus et al. Proposal of a comprehensive model of alcohol hangover. J Clin Med. 2020;9(2):539. PMC7019760(二日酔いの重さに効く要因の整理)。
- [2] Penning et al. The pathology of alcohol hangover. Psychopharmacology. 2012. doi:10.1007/s00213-012-2866-y(飲酒量と重さの相関)。
- [3] Devenney et al. Sleep after heavy alcohol consumption and physical activity levels during alcohol hangover. J Clin Med. 2021. PMC8658514(睡眠と二日酔いの関係)。
- [4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「二日酔いのメカニズム」
- [5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「フラッシング反応」(お酒で赤くなりやすい体質について)
Nomichoが計算に使う式と一次資料はmethodologyにまとめています。
本記事は一般的な情報であり、医学的な助言ではありません。予報は推測値で、特定の人の数値を保証するものではありません。図は説明のための概念図です。